その地に残るか、逃げるか。

boat

STORY

COMMENT

マームとジプシーがここ数年で発表してきた『カタチノチガウ』、『sheep sleep sharp』の完結編として『BOAT』という作品を発表しようと思っている。約1年ぶりの新作である。東京芸術劇場との関わりも、ここまでじっくりと積み重ねてきた。プレイハウスで発表する作品としては、これで三作目。あの空間にて、『小指の思い出』、『ロミオとジュリエット』と描いてきたけれど、今回ははじめて、ぼく自身がぼく自身の言葉を使って、書き下ろす。このふたつのタイミングが合致したことに、ある熟成を感じつつ、さらなる到達点を共に目指していきたいとかんがえている。
この作品を、この空間にて、描く必要を感じているのは、現在だからだろう。しかしそれは、現在という時間を過ごしていれば、自然と、必然的に掘りだされるもので。現在という空気のなかで、深く呼吸するように、しかしそのことだけをかんがえて、作っていこうと準備している。これは、寓話でも神話でもなくて、ほんとうのことだとおもっている。現在という、ほんとうのことを、舞台のうえで繰り広げていきたい。

2018年3月 藤田貴大

TAKAHIRO FUJITA

作・演出:藤田貴大(Takahiro FUJITA)

マームとジプシー主宰/演劇作家。1985年生まれ。北海道伊達市出身。桜美林大学にて演劇を専攻。2007 年にマームとジプシーを旗揚げ。以降、全作品の作・演出を担当。象徴するシーンの繰り返しを、別の角度から見せる映画的手法で注目を受け、演劇の反復における観客や俳優への作用を探求。音楽用語である”リフレイン”の概念を演劇に取り入れ、オリジナルの演劇手法を確立。11年6月-8月にかけて発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第 56 回岸田國士戯曲賞を 26 歳で受賞。以降、様々な分野の作家との共作を積極的に行うと同時に、演劇経験を問わず様々な年代との創作にも意欲的に取り組む。14年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演を成功させる。16年に第二次世界大戦末期の沖縄戦に動員された少女達に着想を得て創作された『cocoon』で第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。また、古典作品の演出も行い、16年に発表した『ロミオとジュリエット』では時間軸を遡って進行させる手法と複雑な装置の転換、主要な登場人物を全て女性に演じさせるコンセプトに注目が集まった。

INTERVIEW

Interview with Takahiro Fujita

Interview date: 5th.MAY
Fumiko Kawazoe

 

 丘の上にある屋敷の三姉妹を描いた『カタチノチガウ』(15年)、隔絶された街で狂気をはらんだ少女が殺人を繰り返す『sheep sleep sharp』(17年)。新作『ボート』は、マームとジプシーで発表されたこの2作の完結編として構想されている。作・演出の藤田貴大が「おとぎ話のような、どこにもない世界」と語る寓話性ある作品群は、どう繋がっているのだろうか。

 藤田はその関連性を「2015年に発表した『カタチノチガウ』の三姉妹は、お屋敷からほとんど出たことがない少女たちを描いた話でした。この作品のラスト、次女がお屋敷を出て、焼け野原のようになった町を歩くシーンがあるのですが、実はこの町が『sheep sleep sharp』の舞台だと思っています。このような感じで『boat』を含めた3つの作品は全て、僕の頭の中では同じ土地や時代として繋がっています。
と語る。

 『カタチノチガウ』は文芸誌『en-taxi』に掲載された藤田のテキストを出発点に作られ、これまでオリジナル作品に関しては口伝えで制作してきた藤田が、初めて文字から立ち上げた作品となった。作家自身はこの戯曲について「活字を元にしたので、詩みたいな文章。イタリアツアーの移動中に書いたのですが、執筆中に故郷の北海道伊達市を想像しなかったのも初めてでした。
と振り返る。ヨーロッパの乾いた風景が、新たな言葉を生み出すきっかけとなった。

 2016年に京都の学校で上演された『0123』との繋がりもある。各教室で0人の演劇(インスタレーション)、1人の演劇、2人の演劇、3人の演劇(『カタチノチガウ』)を見せるという試みだったが、これは、「赤ずきん」や「ヘンゼルとグレーテル」といった童話をもとにしたという。この作品には、浮遊感の中に人身売買や暴力などほの暗いモチーフが織り込まれ、こういった要素のカケラが、翌年初演『sheep sleep sharp』に流れ込んだそうだ。

 それぞれは独立した作品となっているので、もちろん1本だけでも楽しめる。しかし藤田が想像力で構築した空想世界全体を俯瞰でとらえれば、とある街の広々とした風景、パノラマが浮かび上がるだろう。

TEXT

prologue /海岸

海岸から始まって
海岸で終わるのは
だれもがはじめから、知っている

この海岸には、船着き場があって
つまりボートが停まっている
かつて誰かが乗っていた、ボート

chapter 1 /漂着

いくつも流れ着く
見慣れない文字と
誰も乗っていないボートについて

海岸に漂着するそれらのこと
わたしたちはほどんど関心がない
無関係だとおもっているから

chapter 2 /上空

なんともない日の
日のたかい時刻に
あの日を境に、なにもかもすべて

上空が、ボートで埋め尽くされた
それは単純にいって脅威だったし
ここの人々の生活が、まるで

chapter 3 /市街

あの日から市街は
まるで、変わった
あたかもそれは当然のことのよう

こうなってみたときにわかるのは
そもそもひとってこうだった
ということなのかもしれない

chapter 4 /水葬

死んでしまったら
海へ流してしまう
この土地ではそうなっているのだ

海の向こう側、見えなくなるまで
沖へ流されていくボートを見送る
それは、妙に静かな時間だった

chapter 5 /灯台

放たれる、灯りで
いまがいつなのか
ここがどこなのか迷わないように

灯台には灯台守がひとりだけいる
彼はどこへ向けて灯しているのか
その一点の灯りを、どこへ?

epilogue /海原

わかってはいたが
なんにも見えない
暗闇のなかに、ただ浮かんでいる

わたしたちはなんなのだろう
どこからやってきて
どこへいくのだろう
なんにもわかっていなかった

もともとこの土地の人間ではない
彼は
つまり、よそものだった
彼が
どこから
どうして、やってきたのか
誰も知らないし、知ろうともしない
彼に
誰も関心がない
だって、よそものだから

誰もがわたしのことを
うとましくおもっている
わたしがあなたのことを
うとましくおもっているように
けれども、それ以上に
誰もがわたしのことを
うとましくおもっている
その理由は
わかるでしょう
この土地にとって、わたしとは

家という空間に
ひとりでいるのには理由があった
外側で
なにが起こっているか
知らないわけではない
だけれどひとりでいるしかない
ここで
誰かを待っているわけではない
ただ
そのときを待っている

遠くを眺めるその視線の先には
なにが
鏡のようなその瞳には
なにが
映っていたか
この地に
残るか
逃げるか
どうしてそれを選んだか
わたしたちにはわからなかった

CAST&STAFF

cast

staff

SCHEDULE&TICKET

2018(平成30) 年 7月 16日(月・祝) から 7月 26日(木)

東京芸術劇場プレイハウス

アフタートーク決定!

7月20日(金)19時の回 藤田貴大×出演者(宮沢氷魚、青柳いづみ、豊田エリー、中嶋朋子)
司会:徳永京子(演劇ジャーナリスト)
7月21日(土)18時の回 藤田貴大×suzuki takayuki
7月24日(火)19時の回 藤田貴大×名久井直子

※7/24日(火)は聴覚障害者の福祉サービス実施日に伴い、アフタートーク時にも手話通訳がございます。

【一般前売開始】519日(土)

【チケット料金】(全席指定・税込)

S席 5,500円 A席 4,500円
65歳以上(S席)5,000円  25歳以下(A席)3,000円  高校生以下1,000円

※未就学児はご入場いただけません。
※65歳以上、25歳以下、高校生以下チケットは、劇場ボックスオフィスのみ取扱い。(枚数限定・要証明書)
※障害をお持ちの方=割引料金でご観劇いただけます。詳しくは劇場ボックスオフィスまたは劇場HPまで。(要事前予約)
※公演情報等につきましては、変更が生じる場合がございますので、予めご了承ください。

【チケット取扱】チケット購入方法の詳細はこちら

東京芸術劇場ボックスオフィス
0570-010-296(休館日を除く10時~19時)

PC携帯

チケットぴあ
0570-02-9999(24時間・音声自動応答)

【Pコード:485-912】

PC・MB共通

ローソンチケット
0570-084-003(音声自動応答) 0570-000-407 (オペレーター)

ローソン・ミニストップ店頭Loppi

【Lコード:34624】

PC・MB共通

e+(イープラス)

PC・携帯

【託児サービスのご案内】

東京芸術劇場でご鑑賞の際には、一時託児をご利用いただけます。(有料・定員制・希望日1週間前迄に要申込)
ご予約受付・お問合せ:HITOWAキャリアサポート株式会社 わらべうた 0120-415-306(平日9時~17時)

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